「せっかくだから」は悪魔の囁き

両日とも、イベントが開催された中村座の周りでは様々な企業の物販ブースが並んでいた。以下は、ある一人の男の、果て無き戦いの記録である。


〜1日目〜
開演40分前に到着。まだ時間があるせいか、物販ブースの人影はまばらである。散財を防ぐため、「“幽”のブースでは初日のみ、“怪”のブースでは2日目のみ買い物を許可する」、という自分ルールを課す。


まずは、“幽”メディアファクトリー物販ブースへ。

次々と自著にサインさせられている京極夏彦の図。「これは私が無理矢理サインさせられているのを皆で見るイベントなんです」とか何とか。トーク開始直前までブースで物を売っていたような気が。売り子→トーク→売り子。そして売り子をしながら喋る喋る。この人のエネルギーとサービス精神は本当にすごいと思った。
幽のTシャツはデザインがいいので、今回も買おうと物色していると、「ただいま、京極先生御ご来店中でーす!京極先生の本を買われた方は、先生にサインをしていただけまーす!」の声が。せっかくだから本とTシャツを購入。

幽談 (幽BOOKS)

幽談 (幽BOOKS)


これが生まれて初めて買ったサイン本。


コミック幽 (MFコミックス)

コミック幽 (MFコミックス)

諸星大二郎」の名を見つけたので購入。後に知ったが、愛用している“幽”Tシャツ、通称“裸の幼女シャツ”の元画となった漫画が掲載されていた。作品名は『赤い蝶』。この人の絵柄は好きなので、今度本屋で探してみようか。



Tシャツ。
これのことかな?魚の研究者が着るTシャツとしては、なかなかナイスなデザインである。顎の大事なところがきちんと描かれてないのが少し気になるが、これはもはや職業病みたいなもんだろう。気にしだすとキリが無いので見て見ぬふりをすることに。あとこれは何ていう魚なの?


次は、国書刊行会のブースへ。


うーん、まあ、大体見たことあるやつかなー。文庫でしか持ってない本のハードカバーも見かけたが、まあ敢えて買う必要はあるまい。
去り際にふと、軒先に置かれた棚に目をやると、そこには見覚えの無い表紙の本が。


「こちら、明日発売の新刊でして、どの店にもまだ置かれておりません」
「へー…買います」


そもそも国書刊行会の新刊をせっせと置く本屋が日本にどれだけあるのかという疑問はさておき、掲載されている妖怪画は全てカラーなので見た目にも美しい。巻末には、登場した妖怪の解説もある。こういった本がどんどん刊行されるとは、素晴らしい世の中になったものである。そしてその妖怪画の横に延々と羅列される狂歌の数々。教科書のように解説するのは野暮、ということで狂歌の解説は一切無し。狂歌の素養もへったくれも無い人間としては、うーむ、一体どういったタイミングでこれを読めばいいのやら。ビールでも飲みながら流し読みする以外の選択肢が思いつかない、なかなか困った本となってしまった。


アマゾンは「画像なし」だったので楽天のリンクを貼ったが、何と楽天は金額が表示されるのか。これはあまりよろしくないので、なるべくアマゾンの方を貼ることにしよう。



次は、大将軍商店街物販ブースへ。


ほほーう、百鬼夜行のTシャツとな。“怪”ブースでは欲しい柄のシャツが無かったので、代わりにここで一枚買ってもいいかな…でももう今日は結構な額使ったし、どうしようかな…。


「いかがですかー。」
「はあ。これ良いですねー。」
「一枚一枚アイロンプリントで手作りなんですよー。どうですか、これー。」
「柄が色々あるんですねぇ。」
「そうなんです。同じように見えても少しずつ配置が違ったりするんですよ。」
「へー。」
「いかがですか?これとか。」
「これですか…うーん、こっちとどっちがいいか迷いますねー。」
「あら、これですか?Lサイズ…少し大きいかしら?」
「いや、普段から大き目の服を着ているので大丈夫ですよー。」
「あら、そうですか。よかった。」
「じゃあこれください。」


いつの間にやらお買い上げしてしまっていた。売り子のおばちゃんが凄いのか、たわし頭がセールスに激弱なのか。アイロンプリントということで耐久性は少々気になるが、値段はそう高くないし悪くない買い物だったと思う。




この時点でかなりの出費。まだ明日があるのかと思うとぞっとする。これ以上ここに留まるのは危険だと判断し、少し早いが会場入りすることに。売り子のお姉さんの笑顔から目を逸らし、逃げるように中村座に向かうのであった。



つづく。